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法話

喜んでもらう喜び

日蓮宗 妙典寺住職 植田芳明

 

布施をするといえば、持てる者が持たざる者に何かを施すことのように思われがちです。それは違います。財産やお金などなくても、だれもが日々の暮らしの中で周囲の人を幸せにし、自分もまた幸せになれる方法を見つけることが できます。

たとえば『雑宝蔵経』というお経には、「無財の七施」が説かれています。 七施とは、やさしいまなざしで接する(眼施)、柔和な笑顔を絶やさない(和 顔施)、心のこもったあたたかい言葉をなげかける(言辞施)、この身を人の ために尽くす(身施)、思いやりの心で気配りをする(心施)、自分の席を他 人にゆずる(床座施)、一夜の宿を提供する(房舎施)といったことです。つまり布施とは、相手を思って手を差し伸べるということなのです。そして、「喜んでもらう喜び」という言葉があります。

妙典寺の信行会に、毎月欠かさず参加される 95 才のおばあさんがいます。そのおばあさんがある時、とても寂しそうに、「すっかり年取って、足も弱くなったし、声も小さくなって、本当に情けないことです。」 それを聞いていた方が、そのおばあさんにこんな事を言ってあげていました。「おばあちゃん、足が弱くなってもちゃんとお寺に来とるやない、声が小さくなってもしっかりお経あげとるやない。おばあちゃんがこうやってお寺に来とるのを見てみんな励まされとるんよ。」それを聞いて、おばあさんはうれしそうににっこりとしました。まわりで聞いていたみんなもおばあさんの笑顔を見てにっこり。和んだ雰囲気を感じて、言葉を返した方もほっこりとした様子でした。

相手に幸せを与えることで相手は喜びます。すると喜んだ相手はまた誰かに幸せを与えるでしょう。それが巡り巡って、いつしか私の幸せになって帰ってくるのです。人の幸せは自分の幸せ、別物ではありません。繋がっているのです『世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない』は宮沢 賢治の言葉です。新年を迎え、世界では戦争、国内では能登半島地震と思うに任せない事ばかりです。そんな中にあってこそ「喜んでもらう喜び」を体得してまいりましょう。

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